笑顔と涙の所有者



後編


全国高校野球 県対抗総力戦。
初の試みとなる大会の開会が宣言された。

それにより、敗退した球児たちにも、再度甲子園での大会に赴くチャンスが与えられたのだ。


その選抜メンバーには村中魁の名も…そして猿野天国の名も入っていた。



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「猿野…っ。」

魁は、チャンスの与えられた喜びを、先ほど涙をこぼしていた恋人と分かち合うべく。
十二支高校のいる方向に向かっていった。

また、チャンスができたと。
しかも共に甲子園で試合ができる…と。

仲間として…。


そう思い、天国の元に向かった。

すると。


「やったね兄ちゃん!!」

天国と、彼の背に抱きつく小さな影。
兎丸だった。

「僕たちまだ先輩たちと野球できるよ!」

「ああ!!やったなスバガキ!」

選ばれなかった者たちも、天国の笑顔を見ていると悔しがる気持ちも薄れていくのか。
心からの笑顔で祝福していた。

「選ばれなかったのは残念っすけど、頑張ってくださいっすよ!」
「ええ。私たちはしっかりと応援に努めさせていただきますよ。」

「ん…頑張るな、オレたち!」

「ふん、バカ猿が選ばれたのは今世紀最大の奇跡だな。」
共に選ばれた犬飼も、毒づきながらも先ほどよりは柔らかい。

「まだ…野球ができるんだね。」
主将の牛尾も、このチームではないにしろ…与えられたチャンスをかみ締めていた。

「キャプテン、まだキャプテンですからね!精一杯やりましょう!」
「そうだね、猿野くん。」

天国の言葉に、牛尾は顔を綻ばせた。

天国は輝くように笑う。
それは先ほどのように、魁の無何ひそかに…しかし鋭く突き刺さる。



その十二支高校の様子に、魁はなかなか入り込めずにいた。
すると、その横から。

「さるのーーっ!一緒に野球できるな!!」

弟の由太郎が、物怖じすることもなくまっすぐに天国に向かっていく。

「由太郎…。」

「お〜〜チョンマゲ!今度はチームメイトだな!
 よろしく頼むぜ!」

また、天国は笑う。


「ハァイv猿野クン、私たちもよろしくねv」
「あっ姐さん!こちらこそよろしくっす!」


また、笑う。




ぐっ。



#######


「かっ魁さん?!どうしたんですか?!」


魁は、何も言わずに。
天国の腕を取ると、そのまま先ほど天国が涙ながらに離した場所へとつれてきた。

天国が先ほど凭れかかっていた壁に押し付けると。

何も言わないまま、天国を抱きしめた。



「魁さ…。」
「天国。」


低い声で、呟く。
天国はどきりとした。


(俺の名前…初めて…。)



「拙者との約束のために…と言ったな?」

「…魁さん?」



「拙者と野球ができて…嬉しいか?」

「!…はい…っ。」

(そっか、この人…。)


「…なら、いいのだ。」


嫉妬してたのか?


(…ホント生真面目だな…この人。)

天国は魁の気持ちと行動を思い。

魁ににっこりと笑った。


それは魁にだけみせる笑顔だ。


「オレは、魁さんと一緒に野球できるのが、一番嬉しいですよ。」



「…っ!」



魁は、天国の笑顔に堪らない気持ちになって。

天国の唇に口付けた。



「ん…っ。」


「ぅ…んっ…。」


キスは徐々にむさぼるように。

深くなっていった。




「っはぁ…っ。」


ようやく唇が離れた時、魁は真っ赤になって言った。


「抑えがきかぬ…すまない。」


「いいですよ…抑えなくても。」


あなただったら。と小さく小さく天国は呟いた。



笑顔も涙も、今は貴方のために。



天国は思いのままに魁に抱きつき。

魁は天国の身体を、ぐっと抱きしめた。



                                    end


やっと続編更新です。
お待たせして本当にスミマセン!

え〜と、あんまり嫉妬ぶかくないですね…
悠輝さま、このようなものでよろしかったでしょうか?

素敵リクエスト本当にありがとうございました!!



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